EDSFair2011 Nov.

先週金曜日Embedded Technologyと共同開催となったEDS Fairに行ってきた。
事前の予想通り、EDSFのエリアは少し淋しいものがあったものの、MentorやSynopsys, Innotechが出展してたので、それなりに華やかではあった。

だが、人口密度としては、ETのエリアは非常に高かった(歩くのに難儀したほど)のに対し、EDSFの方は、普通に歩けるなど、集客力には差があった。このような状況を鑑みると、大手のベンダはプライベートセミナーにどんどんシフトしていくのだろうと思う。

実際、今回、Cadence, Magma, Apache(Ansysに買収)などの大手は出展しておらず、残念ながら、1,2時間もあれば、一通り見れてしまった。

なぜこのようになった?

前回行ったときは、2009年だったと思うのだが、このときは、運営が苦しかったと思うのだが、それなりに華やかだった。1日いても飽きることはなかった気がする。その時と現在とで何が違うのだろうか?

ボクは、このようにEDSFがシュリンクしていった原因は大手半導体ベンダがEDAベンダの集約に走ったからだと思っている。この流れは、65nm付近から始まった。微細プロセス対応でEDA費用が大きくかさむため、上流から下流までを1社のEDAベンダで賄うようになってしまったのだ。

この結果として、

  • プライマリベンダ以外のツールを導入するのに、多大なコストが必要となった。
    • 社内の膨大な手続きが必要
    • 社内EDA部門の増長
    • 設計者の関心薄

と言う所につながっているのではないだろうか。

大手の半導体ベンダであれば、ツールの選定・フローの決定の大部分は社内EDA部門が握っており、設計者が独自のフローを築くことはなかなか難しい。また、独自のフローを築こうとしても、標準化の名の下に、つぶされることが多いだろう。

今回、EDSFの後に、うちのアナログ設計者と某社とプライベートな打ち合わせをしたのだが、その際に、
「色んな会社を訪問しても、なかなか設計者と直接話しをすることができない。社内のEDA部門の人間で止まってしまう」
と言う話を聞いた。

これは非常に由々しき問題だと思っている。真に専門性を持っており、かつEDAベンダとの真のお客様は設計者であって、社内のEDAの人間ではない。確かに大抵の打ち合わせは(場所が狭いこともあるのだけど)、EDAの人間のみでベンダの方のプレゼンを聞いている。しかし、このスタイルだと、現場の意見は完全に無視されていることになるのだ。おそらくベンダの方もプレゼンしていて、手応えを感じることは少ないだろう。

現状を打開しましょう

先にも書いたとおり、EDA業界が低調な原因は、EDAベンダの集約に一因があると思っている。確かに年々かさむEDA費用は大問題だった。そのため、ある程度集約するというのは必要だろう。例えば、P&Rのツールに3社のツールを購入する必要はない。ここは一社に絞るべきだろう。

LSIの設計が他の製品と異なるところとして、

  1. 上流(システムレベル)から下流(RTL, Trレベル, GDS)までの範囲が広い
  2. 大規模(デジタル)から小規模(アナログ)まで扱う必要がある

と言う所ではないだろうか。このような大規模な領域を一社で賄うには無理がある。実際、EDA大手のSynopsys, Cadence, Mentorも得意領域はそれぞれにおいて異なる。コンソリするのであれば、各領域ごとに行うべきであろう。全フローを一気にと言うのは、現実的に無理だと思う。

そして、EDAベンダは今こそフォーマット(CPFとかUPFとか。。。)やプロプラ(シミュレータオリエンテッドなEncryptionとか)のにこだわるのではなく、お互いの得意領域を尊重して、強いところを更に強くしていってほしい(カルテルはあかんけど)。そして、その技術を持って、半導体ベンダにアクションを起こして欲しい、と思っている。

最後に

今回、以前から付き合いのあったベンダのブースを訪問したが、今まではずっと日本に来ていたCEOが今回は来ていなかった。もちろん、CEOなんだから、暇はないんだろうけど、これまでは日本市場の開拓に熱心に活動していたように思う。今回はCEOだけでなく、本社の人間は一人も来ていなかった。すなわち、日本の市場はもはや相手に値しないのだ。世界の半導体市況が回復しつつある現場で、日本の半導体ベンダだけは、その地位をどんどん落としていっている。このような市場に魅力を感じないのも無理はない。

これ以上、手をこまねいていたら、日本の半導体メーカーはどんどん世界から見放されてしまう。島国のためか、社内で危機感を感じることは少ないが、このような展示会に出ると、些細なことからでも危機を感じてしまう。

ボクにできることは、設計者の方にEDAツールに対しての関心を持ってもらい、設計フローの構築は自分たちの仕事なんだと思ってもらうことなんだと思っている。そこから、革新的な設計と言うのが生まれてくると信じている。