たぶんわからないサブスレッショルドリークの説明

@natsutan さんに呼ばれた気がしたので(と言っても、お互い鍵付きなので、twitter貼れない)、サブスレショルドリークについて、少し書いてみようかと思います。

(注) デバイスの勉強は、大学の時にして以来です。しかも、手元に教科書類は一切ないので、定量的な話は一切しません。鵜呑みにする人はいないと思いますが、できればちゃんと勉強して下さい。

(注) HDLの話は一切ありませんが、せっかくなので、http://qiita.com/advent-calendar/2013/hdlにしちゃおうかと思います。

半導体の消費電力とは

HDLerの方ならよく知っていると思いますが、LSIの消費電力は、シンプルに以下の式で求まります。

$$ P = \frac{1}{2} \alpha fCVcc^{2} + I_DVcc + I_LVcc $$

となります。第1項から

  • 充放電電流
  • 貫通電流
  • リーク電流

と言われてますよね。この電力を削減するために、主にHDLerは、充放電電流を削減するために、トグル率を最適化し、回路屋さんは寄生容量を減らしたり、貫通電流を減らしたり、そして、デバイス屋はリーク電流を減らしたりするわけです。

では、このリーク電流って、そもそもどういうものでしょう?

ここでいうリーク電流は、総称で、分けるとすると、

  • サブスレッショルドリーク電流
  • ゲートトンネルリーク電流
  • GIDL(Gate Induced Drain Leakage)

とに分類されます。他にもあるのですが、おそらくこの3つが支配的です。最後だけで英語なのですが、いまいちピンとくる和訳に出会ったことがないので、気にしないでください。

サブスレッショルドリーク電流

さて、この中で、最も大きいのは、今も昔もサブスレッショルドリークです。一昔前は、サブスレッショルドよりもゲートトンネルリークが大きくなる、なんて言われましたが、High-K材の導入なので、何とか乗り切ってる感じです。

では、このサブスレッショルドリークってどんなものでしょう?

しきい値電圧って?

その前に、しきい値電圧 \( Vth \) ってなんなのでしょうか? そもそもどうやって決まるものなのでしょうか?

教科書には、MOSのVgs-Ids曲線として、このような図が書かれていることが多いと思います。

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要はしきい値電圧って、電流が流れ始めるとこですよね。

さて、この縦軸をLogにするとどうなるかというと(下手くそな絵で申し訳無いっす)、

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という感じになります。さて、半導体デバイス理論の中では、Vthは、論理的に式から求まります。しかし、実際の世界では、詳細なパラメータ値はわからないので、上に書いたように、50nA/umが流れるときのゲート電圧、というような定義でVthが決められます(これは、外挿方式、定電流方式、と呼ばれてます)。

例えば、Vthの高いデバイスがなぜリーク電流が小さいかというと、下の絵のように、Ids曲線が右にシフトするため、Vg=0の時のリークは、Middle-VtやLow-Vtのデバイスよりも小さくなります。ここで重要なのは、縦軸はLogなので、ちょっとした差でも大きな電流の差になります。

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なぜ、完全にOFFにならないの?

さて、この下手な絵の下2枚は縦軸がLogです。そして、曲がっているように見えますが、線形に電流が下がっている(ここをサブスレッショルド領域といいます)ということは、ここは、ゲート電圧に対して、Exponentialの特性で電流が変化しています。

さて、このExponentialの特性というと、何を思い浮かべますか? そう、ダイオードですよね。ここは、キャリアが拡散でちょろちょろ流れている領域なのです。

ここで、みなさんが嫌いなバンド理論の絵を書いてみましょう。チャネル方向で見た時の断面図です。Vgs=0, Vds=0.1, Vbs=0を想定しています。

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(フリーで絵を書くのは無茶ですね)

何も書きませんでしたが、P型基板でN型の拡散層を過程しています。P型N型を接合させた時、バイアス電圧がかかっていないと、フェルミ準位が(詳しくは、ガチ物性屋さんに聞いて下さい)一致するように接合します。このときに(赤丸で囲みましたが)、N型からP型に向かう電子には壁があるように見えます。しかし、ここには、電子がたくさんあるため、拡散現象によって、ちょろちょろゲート領域に出て行ったりするわけです。

さて、ゲート電圧をかけるというのは、そもそもどういうことかというと、この壁を下げることなのです。壁を下げると、Exponential的に電子の量が増えます。なので、サブスレッショルド領域では、電流の量はExponentialの特性になるわけです。

ということで。。。

自分でもわかりにくいと思ってしまった説明ですが、いかがでしたでしょうか? ガチの説明は、@natsutan さんがキッテルの本で勉強されるそうなので、その成果を待ちましょうw