世界一になる意味

色々と考えさせてくれる週末だった。


ぼくは、金曜/土曜と国プロ(三次元集積化技術)の合宿に参加していて、その時に『仕分け事業』のニュースを見ました。
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20091113NT000Y74513112009.html


その後も、Twitterなどで情報を見つつ思ったことなのですが、
『今の民主党政権には、国をどうしたい』
というビジョンがあるのでしょうか?
科学技術(一括りにすることに違和感はありますが)関係の予算を削減し、母子家庭手当、高校無償化をすることで10年後にどのような日本になっているのか、というイメージ映像を彼らはちゃんと持っているのでしょうか?


ぼくは『世界一である必要があるのか』という質問自体をするような人が研究の意義を判断すべきではないと思います。
世界一にする必要は『ある』のです。


世の中にはまだまだ解くことができない問題が山積しており、そのために日夜研究が進められています。
その問題を解くきっかけになれば、人類の未来に大きく貢献することができます。


そして、世界一のスーパーコンピュータを作ることで、日本は『技術者のハブ』になれます。
コレは非常に大きいです。少子化の日本に取って、今後、日本人だけで研究レベルの水準を保つことは難しいかもしれません。
しかし、このようなインフラがあれば、世界中から研究者がやってきます。彼らは、一時的にしか滞在しないかもしれません。しかし、彼らは研究成果を残して日本を去っていきます。そして、日本はそれを利用することができます。


すなわち、スパコンのようなインフラをもつことで、日本の研究水準を保ちながら、優位化をはかれます。羽田のハブ化よりもよっぽど明確なリターンがあります*1


今の半導体の状況を見てみましょう。微細な半導体を作るためには、非常にお金がかかります。コレは一企業ではまかなうことのできない量です。結果として、日本の殆どの企業は、32nm以降の開発を見送ろうとしています。


それに対して、台湾のTSMCは28nmのシャトルを2010年から行う、と言っている。残念ながら日本から見ると、二世代は先に言っている。
これによって、日本のメーカーもさらにTSMCのシャトルを利用するようになるだろう。また、日本だけではなく世界中からマスクデータが集まってくる。


まさに、台湾は半導体業界のハブなのだ。今や、TSMCに供給を握られている、とも言える。
もちろん、世界的に分業すればいい、という意見もあると思うが、部品の供給を完全に握られていると言うのには一抹の不安を禁じ得ない。


研究の世界は半導体と同じ道を歩まないようにして欲しい。やはり、世界から魅力を感じてもらえる研究を行う必要があり、そのためには、ある程度のインフラは必要なのだ。


仕分け事業の趣旨自体は理解します。ただ、あまりにも『森を見て木を見ず』です。
技術関連の予算を減らして、○○手当だけ増やしていくのは、悪い共産主義です。


スパコン、Sprint-8などなど。世界からの研究者を惹き付けることができるインフラは、資源のない日本にとって、Goldと同じ価値があると思うのですが、今回の決定には本当に残念です。


研究までもアウトソースするようになっては、日本の衰退は必至です。

*1:今さらながら、『成田はマングースになる』発言に吹いてしまう